日本酒の高精米歩合がもたらすもの
日本酒のランクを示す用語に特定名称があります。特定名称は自社社内のランク付けであって、他との比較ではありません。表示は景表法によって制限されますので、酒類の表示基準もそれに沿って優良誤認させないように、造り方が特別であるものには、吟醸酒などの表示を可能としているのです。
特定名称という統一的な呼称によって、消費者の商品選択の目安となっていますが、先にも申し上げたように自社内のランク付けであるので、当然に純米大吟醸であれば、どの蔵元でも同じ品質でもよさそうですが、そうはいきません。
これらのことから、私は特定名称に否定的です。
表示事項の中でも精米歩合は、数値で表されるので消費者に最も訴えやすく、商品差別化の手段としても用いられていますし、また、味の想像がつきやすいと私は考えます。
【1本10万円は安い?】
今や最も精米歩合の高いものは、1%です。複数の蔵元が醸造しています。価格は四合で10万円。単純計算ですが、白米100㎏で仕込む場合に、精米歩合60%は170㎏、同 50%は200㎏、同35%は290㎏、同23%は440㎏、同7%1,430㎏、同1%は10,000㎏となります。60%を1とすると、35%で1.7倍、7%で8.4倍、1%は58.8倍となります。原料の米の価格は約59倍です。精米時間は、60%精米は約30時間かかるといわれます。1%精米はというと、1%の製品を発売している某蔵元さんは72日といっていますので、約1700時間です。これも約57倍です。コストを考えると1本10万円は安いのかもしれません。
【日本酒の評価のしわ寄せ?】
精米歩合を高くすることの利点はなんでしょうか。高くなるほど雑味が少なくなると言われていますので、すっきりとした味わいになるのでしょう。
日本酒の評価は悪いところを探すことにあります。国税庁や国税局の鑑評会で入賞するようなお酒は欠点の少ないものが上位になりますし、国税局鑑定官室の技術指導も欠点をなくす醸造方法に重きを置いてきました。
【高精米歩合の問題点】
日本酒通の方なら知ってて当然の「YK35」。YK35が主流だった時代は、どこの蔵元でも最高の精米歩合でした。
その当時はバブル期真っ只中。多量生産、大量消費が普通でしたので、あまり気にはなりませんでしたが、今や省エネやエコは普通、再生可能や持続可能なのが当たり前の時代になりました。
何が問題なのかと言うと、「精米歩合」の反対である「精白歩合」です。
省エネ、エコ、から始まり今やSDGs、環境問題がビジネスになり、ありとあらゆる生産活動が問題視される時代となりました。
酒蔵で精米した後に出る赤糠、中糠、白糠、特上糠は、漬物用やせんべいの原料用として再利用されていますが、それでもすべてが再利用されているわけではありません。
蔵元にはこれらの糠が何に使用されているのか、きちんとした情報開示が求められるでしょう。
日本酒業界のみが、時代に逆行しているように見えるのです。
いつ何時、問題視されて炎上しかねないことであると危惧しています。
自家精米ではない共同精米や搗精工場に委託しているメーカーや精米後の白米を購入しているメーカーは、自社では把握していないからといって逃げきれるものではないので、情報収集は必要でしょう。
削りに削って、原料米の極僅かしか使用せず、「糠や米粉はきちんと再利用しています。無駄にはしていません。」と声高らかに訴えたとしても、すべての消費者の支持は得られないでしょう。
低精米歩合の複雑な味わいを良しとする日が来るでしょう。
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