せらワイン騒動
【ブランド化の難しさ】
・せらワイン騒動
広島県の世羅町の三セクワイナリーに関する、町議会議員さんの発言が、その界隈をにぎわせております。
町議会において、三セクのワイナリーの決算報告に対する質疑で、ワインの売上が伸び悩んでいる状況に対し発言した(その後発言は取り消されています。)「ワインがまずいから」が、ぶどう生産者さんや他の議員さんから批判され、陳謝したというものです。
9月にこの騒動を報じた「yahoo!ニュース」のコメント欄では、「まずいものをまずいといって何が悪い」といった論調が多いように見えます。
更に、東洋経済ONLINEでは、「広島世羅「まずいワイン騒動」は何がまずいのか(「売れない特産品」を量産する地方の無責任構造)」と題して、地方創生のための特産品開発について書かれております。
・せらワインとは
そもそも、せらワインはどういったものなのか、味や品質はわからないので、それ以外の情報をネットで探してみました。
2020/5/6付の中國新聞デジタルの記事によると、原料用ぶどうは町内の契約栽培農家(20戸・9ha)から調達しており、2019~2020年のぶどう収穫量は55トン(フルボトルで55,000本相当(約41㎘)の醸造数量と想定される。)。
このことから、平均反収は約600kg。高級ワイン並みの栽培量ではあるが、この年は霜により35%の減収とのこと。通常期であれば平均反収は約900㎏強となります。
販売価格は、同社のWebshopで確認すると2,500円代です。
ぶどうの栽培方法や販売価格から、製造されるワインのタイプは想像できると思います。
その他、経営内容は官報の決算公告を見ると、直近三期は純損失が続いておりますが、△617万円→△358万円→△57万円と赤字は減少傾向にあります。決算内容は最終期は固定負債が4000万円増加し、自己株式を取得又は消却しています。
中國新聞デジタルの記事では、2019年6月期の売上高1億8千2百万円との記載あり。醸造数量55,000ℓ~84,000ℓで、フルボトル販売価格平均2,500円とすると、1億円以上の売上高となります。
HPのワイナリーの画像から、製造用のタンクは30基以上保有されておりますが、さらに5基購入するとのことです。また、「高品質ぶどうの買取価格を上げる」とのことですので、一部だとは思いますが、高級化への転換を図る方向性であるとの想像ができます。
これらの情報から、せらワインは地域活性化のための行政施策の一環として造られはじめたワインのようですが、同ワイナリー以外にも他県の酒販店でも販売されています。
世羅町は2010年11月に構造改革特区に認定されておりますが、せらワインのメーカーは2002年11月にワイナリー設立(出典:ウキペディア)していることや、2010年から町内産ぶどうのみでの生産にシフト(それまでは、町外からも調達)しているとの記事から、特区免許ではなく、原料調達自由な免許を取得しているようです。
同地域に他のワイナリーはなく、最も近いのは三次市のワイナリーのようです。
・問題なのは
ブランドの観点からみると、競合相手もなく、広島県内にもワイナリーは少ないため、これまでは地域ワインとしての真のブランド化には関心がなかったのでしょうか。
メーカーは、ブランドに関心がないと品質は一定程度あれば満足してしまうのが常です。
議員さんの発言の発端は、赤字の原因追及かと思われますが、その原因は売上減少であることには間違いないと思います。でなければ、「まずいから売れない」とは言わないはずです。
赤字の原因はそれだけではなく、製造原価のほうが問題なのかもしれません。数字がないのでここからは想像ですが。
原料調達方法は契約農家形態です。ぶどう1キロ当たりの単価契約の場合には、当然、農家は収穫量を増やします。(役所が補助を出しているかもしれませんが)また、買取価格が高いのかもしれません。
製品をみると氷結濃縮のデザートワインなどもありますので、製造原価も上がります。
製造用設備はHPの画像等から、タンクなどは2005年取得のようですので、耐用年数12年を経過していますので、償却は終わっているのでしょう。
今回の議員さん発言に対し、他の議員さんがおっしゃった「生産者がやる気をなくす」も東洋経済の記事では批判されています。
この「まずい」、「やる気をなくす」発言で、むしろ農家さんはやる気を出したのではないかと思います。ワインの味はぶどう9割などと言われます。良質のぶどうを作ってこそいいワインができるのは醸造される方は誰しもが知っていることです。(ブティックワイナリーが増えている要因です。)
良質のワインを現在の形態で作り続けるためには、ワイナリーと栽培農家の一体化は欠かせないのです。
せらワインは、高品質化に向けた新たな取り組みを行うようですので、今後の取り組みに期待したいと思います。
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